シャント管理におけるフィラピー(FIRAPY)の有用性:FIRAPY ってなあに?各国の使用経験は?

By 井尾 浩章 • 02 Apr, 2019

            【血液透析患者さんのためのシャント管理とフットケアの新しい治療法】を抜粋した
井尾 浩章(順天堂大学練馬病院腎臓内科 准教授)

サマリー

  • フィラピー(FIRAPY)は、特殊な赤外線で非可視の電磁波(光線)であり、血管内皮機能を改善する効果がある。

  • フィラピーは、透析シャントの血流増加や開存率の改善効果があり、血液透析患者のシャント機能不全の予防が期待できる。

  • フィラピーは、世界各国で使用されつつある。

はじめに

血液透析患者さんにおけるシャント機能は、透析効率に影響を与えるものであり、閉塞や狭窄を予防することはquality of life(QOL)の改善にもつながる可能性があります。本項ではシャント機能の改善効果が期待できるフィラピーの有用性を紹介します。

1. フィラピーってなあに?

血液透析(HD)患者の血管アクセス(内シャント:arterio-venousfi stula; AVF)は,維持血液透析を受けている患者さんに必要不可欠です。

血液透析用血管アクセスの予後は、①血液凝固能の亢進、②血管内皮細胞の障害、③赤血球容積、④いくつかの遺伝子〔ヘムオキシゲナーゼー1(HO-1)〕の多型1)などに影響されると推測されます。これら諸因子は薬剤または治療手段によって調節される可能性があり、最近のAVF 研究の焦点となっています。血液透析患者さんのバスキュラーアクセス(VA)機能不全の80 ~ 85%は血栓形成を原因としており、その80%以上が既存の狭窄に起因していると古くから報告されています2)。以上のVA トラブルを予防することは、患者さんのQOL の改善にも繋がると考えられます。

フィラピーの原理

赤外線は非可視の電磁波であり,可視光線よりも長い波長を有します。波長の違いに従って赤外線は、①近赤外線(IRA:760 ~ 1400 nm)、②中赤外線(IRB:1400 ~ 3000 nm)、③遠赤外線(IRC:3000 nm ~ 1 mm)に分類されます。遠赤外線は皮膚や末梢組織の血流改善作用を有するため外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する虚血性病変や壊死に使用されてきています。遠赤外線療法(フィラピー)が血管内皮機能を改善することや,冠動脈疾患・心不全・不整脈の患者における内皮機能障害を減少させることを示唆する報告があります)。

フィラピーの具体的な方法は専用の機器(図1)を用いて、週3回の血液透析施行中に30 ~ 40 分間のみ、シャント肢に皮膚から20 - 30 cm 離して照射します。短期の温熱効果および長期の非温熱効果がアクセス血流量を増加させるものであり,2つの効果は相加的に作用します。フィラピーは、海外においてその有効性がすでに認められていますが、使用方法を守って低温火傷には十分に注意します。フィラピーの使用では、①照射機器と皮膚の距離を20 cm以上にすることと(添付説明書に記載あり)、②皮膚の観察および穿刺針の抜針後の止血確認を十分に行う、③血液凝固機能が良くない患者さんや透析終了後に止血しにくい恐れのある場合には、透析終了の1 時間前からフィラピー照射を中止することなどがあります。



フィラピーの作用機序

短期の温熱効果および長期の非温熱効果がアクセス血流量を増加させるものであり、2つの効果は相加的に作用すると考えられています(図2,参照: 臨床透析 vol25,No8, 2009)。遠赤外線の短期温熱効果は、脈管の拡張とアクセス血流量の増加を惹起します。皮下10 mm において温度は4°C 上昇し、皮膚から20 cm 離れた箇所からの30 ~ 60 分照射により、皮膚温は漸増して38 ~ 39°C のプラトーに達します。非温熱効果については、動物実験および臨床研究で遠赤外線が内皮機能を改善させる可能性が示唆されています。皮膚血流量の増加がL- アルギニン/NO回路に関連していることを示唆する報告やサウナ療法が有意に血管内皮機能を改善し、その結果冠動脈疾患リスクのある患者さんにおいて上腕動脈の血流依存性血管拡張反応が4%から5.8%へ増加したことを示す報告などが散見されています。さらに、遠赤外線の非温熱効果として、新生内膜過形成の抑制並びに酸化ストレスの減少があります。非侵襲性赤外線レザー療法やサウナ療法といった赤外線療法は血管内皮機能を改善しますが、シャント状態の改善については明らかではありません。非侵襲性赤外線レザー療法がウサギの新生内膜過形成を抑制することを見出した報告や、2週間の連日ドライサウナ療法を45 分間受けた患者さんでは8-epi-prostaglandin(酸化ストレスの指標)の尿中レベルが低下することを示したとの報告もあります。遠赤外線はNF-E2-related factor-2(Nrf2)に依存するHO-1 発現を刺激し、同時にTNF- αが誘導する接着分子の発現を抑制することが報告され、HO-1 の高発現がフィラピーにおける血管内皮細胞の抗増殖効果および抗炎症効果を説明するものであろうと考えられています)。

2. FIRAPY の各国の使用経験は?

台湾においてWS 社製のFar Infrared Therapy unit(図1)が2000 年初頭に開発製造され、現在、台湾、中国、北欧を中心に世界10 数か国で使用されています(図3)。韓国、イギリスから穿刺痛の改善、PTA の減少についての報告があります。また、イギリスと中国のメタ解析もみられます。




フィラピーは皮膚の血流改善作用を有するため外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する皮膚の虚血性病変や壊死に使用されてきています。フィラピーが血管内皮機能を改善することや,冠動脈疾患・心不全・不整脈の患者における内皮機能障害を減少させることを示唆する報告があります。台湾からの先の報告ではフィラピーが1回のHDでこれを施行しない患者と比較してAVF 血流量を漸増させることが示されており、対照群との比較において1年間同療法を受けた患者群では、AVF 機能不全率は低く(12.5%対30.1%)、AVF 血流量の漸増量は高く(図4)、一次開存率で優れていた(85.9%対67.6%)(図5)と報告されています。また5年間の開存率においても有意に優れていた(87.1%対78.7%)と報告されています(図6)。さらに新規に内シャント造設術を受けた血液透析患者さんの1年開存率をみた報告もあり、既に使用されているシャント血管のみならず、新しく作製されたシャントでも1年開存率は87%であり、コントロール群よりも17%改善していました(図7)7)。さらに新規作製されたシャント血流量は劇的に増加し、最初の1カ月でフィラピー群は700ml/min(+450ml/min)に増加し、コントロール群よりも37%増加し(図8)、12 カ月後における新規作製されたシャントの機能不全を17%減少させた(図9)と報告があります。



















台湾と日本では内シャント作製術から実際の穿刺時期までの期間(台湾では術後4-6 週間後に穿刺、日本では1-2 週間後)に違いが認められるようです(図10)。したがって推奨されるフィラピーの使用法を示しました(図10、11)。

日本国内においては現在のところ、フィラピーの臨床効果をみた研究報告は、2015 年の日本透析医学会学術集会総会での我々順天堂大学からの報告があるのみです。頻回のシャントPTA 施行症例群ではフィラピー開始後に有意に治療間隔は延長していました(図12)。年2回以内のシャントPTA 群では血管径は増加し血管内膜肥厚は減弱していました(図13)。また我々は、血管機能や動脈硬化性疾患の進展の指標である血中酸化LDL コレステロール、ペントシジン、血管内皮増殖因子(VEGF)濃度を測定し、酸化LDL が有意に減少していたことを発表しています(図14)。












おわりに

血液透析患者さんのシャント閉塞や狭窄を予防できる可能性があるフィラピーを紹介しました。フィラピーは、今後さらなる発展が期待されます。




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